ベッドの軋む音が、真行寺の熱を帯びた息遣いと共に聞こえる。
絶え間なく。
そんな時、遠のいていた意識が、ふわりと自身の中にもどってくる。
熱い吐息と一緒に感じられたのは、小さな滴。目をあけてみれば、真行寺の額には汗が滲んでいて、伝い落ちてきたことを教えてくれる。
触れてみたくて、そっと拭ってみた。
それで気がついたのか、腰を進めていた真行寺が動きを緩める。
「……」
唇だけが動いて何かを伝えられても、ぼんやりしていて直ぐには応えられない。
代わりに、髪に指を絡ませて、小さく喘ぐ真行寺の唇に唇を重ねた。
途端に強く吸われる。舌を絡ませ、吸い上げられる。痛みに痺れる舌が、なお狂おしく互いに求めあう。
胸の奥がじんじんする。甘く痺れるようなものが、胸からふぁっと全身にめぐり指先までを包むように覆い尽くしていく。
また―――乱されてしまう。
文化祭が終わった夜。
いつもの空き部屋での、いつもの逢瀬は、互いの身体を抱き寄せた時から言葉はいらなかった。名を呼ぶ、それさえももどかしいと思えるほどに求めあった。
竹刀を握る手には、いつも肉刺ができている。武骨で大きな手が、自分にだけどこまでも優しいのを知っている。その手が、髪を梳き、肩を抱き、腰を引き寄せる。
そんな優しい手が、離れてしまいそうだった。
舞台上で真行寺に当っていたいたスポットライトが小さくなって、やがて消えた時、客席は水を打ったように静まり返った。が、次の瞬間、拍手が一斉に湧き起こり、それは暫くは鳴りやまなかった。
対抗劇が成功したことへの、なによりの証拠だ。
出したくなかった。
出さざるを得なかった。
断って欲しかった。
断る術を与えなかった。
種を蒔いたのが自分自身であるのに、ならば、実はすくすく成長する事は判っていたはずなのに。
離そうとしてしまった自分。
身体も心もばらばらになっていくのを感じても、迷っていた。
迷路の中を彷徨い続け、やっと出口を見つけた時、繋ぎとめるためにようやく歩き出せた。
深い口づけからチュッと音を立てて、真行寺が唇を離した。
頬に触れるだけのキスをくれる唇は柔らかく、心地よさに吐息が漏れる。
「続けるけど、良い?」
「ああ…」
「辛くない?」
「良いんだ…」
「辛かったら…」
低い声が耳元に気遣う言葉を乗せてくる。
それだけで固くなる自身の雄。真行寺に簡単に知られてしまう。
「良いから…続けてくれ…」
「うん…」
真行寺が腰をゆっくりと進め始める。
自身の中にある真行寺のモノが、ふたたび大きくなったのが感じられた。圧迫感に刺激されて、頭がくらくらしてくる。
溺れてしまわないように、真行寺の背に回した腕に力を込めた。手にも。
「辛かったら、背中に爪、立てていいから…」
動く合間に掛けられる言葉に籠る熱に、身体の奥がじんと痺れる。その波は、真行寺のモノを感じるだけで大きく広がっていく。全身を巡って、やがて自身の雄に辿り着く。固くなり、先走りの液で濡れそぼってしまっている。
こんなにも感じてしまう自分に、戸惑っていたのも最初だけ。今はもう、真行寺から与えられる快感を追いかける事だけしかできない。
「真行寺…」
「アラタさん…」
名を呼ぶ。
それが合図だったように、真行寺が身体をぶるっと震わせて迸らせた。
その感触に誘われるように、自身も迸らせた。
互いの荒い息が整った頃、真行寺が頬に額に瞼にキスをくれる。唇にも触れるだけのキスをくれる。うっとりと心地よさに波間でうとうとしていると、真行寺が自身の中からさっと抜き出していった。
以前ほどの嫌な違和感は、今はない。
人の心の不思議だろうと思う。
理屈や理性ではなく、心ほど正直なものはないのだと。
真行寺が汚れた下肢や互いのモノをきれいに拭ってくれた。
その後、少しだけ話をする。互いの言葉は少なかったけれど、薄い月明かりに照らされる真行寺を見ているだけで、それだけでも良いと思う。
「少しだけ寝ていこうか?」
「良いの?俺は嬉しいけど…アラタさん…」
「たまには良いだろ」
「ありがと、アラタさん…」
真行寺の胸に頬を寄せて、その温もりを感じる。
腰をそっと引き寄せられ。
「俺…またやりたくなったらどうしよう…」
「ばか…」
「だって…、アラタさん、今夜、めっちゃ色っぽいもん」
「ばーか」
軽く頭を叩いた後、真行寺の胸にまた凭れて、そっと笑みを零した。
真行寺×三洲。久しぶりのエロ?です(*^_^*)
11月13日