チョコ記念日




真行寺を恋人として認めたのは、確かに自分の意志だ。
だからと言って、なんでもできるわけじゃない。
あのバカは、受験が終わって祠堂に戻ってきたら交換しましょうね、などと、電話の向こう側で嬉しそうに言っていた。

―――この俺が、チョコを渡すだって…

確かに男同士。貰うばかりでも気は引ける。
気は引けても、どうしようもない。今までは、自分の気持ちとは縁のないところでチョコが溢れていた。
心動かされたこともない。真行寺の普通のチョコ以外は。決して本人には伝えないけれど。

―――真行寺は喜ぶかな…

ようやく本命の(最後の)受験が終わり、疲れもピークだと言うのに、頭に浮かぶのがあのバカの事ばかりというのが癪に障る。
癪に障るのに、他には何も浮かばない自分は、相当に真行寺に感化されてしまっているのだと思う。
自宅の近くのコンビニに、だから寄ることもできたのだろう。

色取り取りにラッピングされた大小のチョコの軍団達。
その中から一番小さな箱を手に取った。

―――要は気持ちだから…

誰に言い訳をしているんだか。
そんな自分に思わず笑ってしまう。
それ以上に、真行寺の喜ぶ顔が浮かんできて、心があたたかくなる。

日々、人の心は進化していく。
それはそんなに悪い事じゃないと、ようやく思えるようになったことを感謝したい。


2014年2月14日  ブログにアップした短い物です