音楽祭が終わった夜、真行寺は、三洲といつも逢っていた海側の部屋に来ていた。
マットレスの上で膝を抱いて、窓の外を何時までも見ていた。
今夜は雨もなく、天の川が綺麗に見える。
月も。
一年に一度の逢瀬を、彦星と織姫は楽しんでいるだろう。
それに引き換え、自分は…。
「ハハ、やんなっちゃうなぁ…」
いつも、いつだって三洲を想っている。
三洲が生徒会長になってもう何か月になる?
忙しいのは判っている。理解している。だけど、ここのところの忙しさは本当に心配で仕方がなかった。
遠目で見ても判る。少し痩せて、忙しくしているから皆は気がつかないかもしれないけれど、顔色もすぐれない様にみえた。
肌の白い人だけれど、青白く見える時もあって。透き通るような儚い感じだ。
大丈夫だろうか?
ご飯は食べているだろうか?
ちゃんと寝てる?
あんな風に、疲れて制服のまま寝てしまうような人じゃないのに。
本当に疲れているんだなと思った。
自分の勝手で煩わせてはいけないと思えば思うほど、遠くから見守る事しかできなかった。
「はぁ〜、なんだかなぁ…」
文化センターでの光景が頭から離れてくれなくて、まだ頭痛が治まらない。
過労で倒れてしまった三洲。その三洲をしっかりと支えていた相楽先輩。
あのプライドの塊のような三洲が、安心しきって身体を委ねていた。
ガラス越しに見えた横たえている三洲の側に、何をおいても行きたかった。それなのに動いてくれなかった足。
思い知らされたのだ。はっきりと。
酷く哀しくて、認めることに悔しさだってある。
入試の時に一目惚れをしてから一年半。ずっと三洲だけを見てきたのだから。
帰りのバスの中で、クラスの皆の声が自分を通り過ぎていく。
「やっと諦めた真行寺」
「身の程を知った真行寺」
からかいも含む言葉なんて、気にもならない。
そんな事、自分自身が一番知っている。
だから、一生懸命追いかけている。
三洲の心を追いかけている。
いつか受け入れて貰いたいと願いながら追いかけている。
相楽先輩と頻繁に電話で話をしていた三洲。
寮内と言ってもやはり狭い。見たくなくても見えてしまう。受話器を握りしめながら、時に笑顔で話をしていた。
自分には笑顔どころか、そういえば、もう随分と三洲と視線すら合わせていない。
所詮は、三洲にとってそれだけの存在なのかもしれない。
「アラタさん…俺ね…」
今だって強くなりたいと思っている。
三洲を支えられるだけの器のある人間になりたい。
その気持ちに嘘はない。
俺ね…
ほんとに好きなんだよ…
それだけはわかって…
音楽祭の後、三洲が倒れた夜の真行寺。SSS(スーパー・シュート・ストーリー)です。切ない真行寺を書きたかったの…^^;
11月20日